札幌高等裁判所 昭和25年(ネ)31号 判決
控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の陳述した事実は、被控訴代理人において、被控訴人と訴外眞砂尊雄との間の約定は請負その他の実質を有する仮裝自作でないのであつて單なる雇傭関係に過ぎないと述べ、控訴代理人において、本件農地は自作農創設特別措置法第三條第五項第二号により仮裝自作地として買收したもので訴外眞砂尊雄の小作地として買收計画をたてたものではない。購入した農具、種子、肥料は被控訴人の出資のみによるものではない、また眞砂尊雄は報酬を貰つていない。本件農地を同人に耕作せしめた際被控訴人と同人とは收穫物の純益金中十分の六を同人に供與し十分の四を被控訴人が取得する協定ができている、本件農地に対し被控訴人自身が耕作した事実はない。被控訴人から提供した労力は何れも女子で主として收穫期に至り形式的に一時間乃至四、五時間の手傳をし当時食糧の入手が非常に困難であつたのでその都度收穫物を持ち帰つているのでこれは食糧持運びの手段として行われたに過ぎないと述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
(立証省略)
三、理 由
北海道札幌郡琴似町農地委員会が昭和二十三年六月中被控訴人の所有にかゝる北海道札幌郡琴似町字発寒三百八十九番地の一畑一町一反歩の農地について自作農創設特別措置法に基く買收計画をたてた事実は、当事者間に爭のないところであるが、右農地が訴外眞砂尊雄の小作している土地であるとして買收計画がたてられた事実は成立に爭のない甲第十四号証その他被控訴人の提出援用にかゝる各証拠によつてはこれを認め難く、かえつて成立に爭のない乙第二号証の一、二及び甲第十四号証によると、右農地が眞砂尊雄の請負耕作地であるとして買收計画がたてられたものである事実を認めることができる。ゆえに右農地が被控訴人の自作地であるのにこれを眞砂尊雄の小作地であるとして買收計画をたてたことを前提として右買收計画を取消すべきものであるとの被控訴人の主張の失当であることは明らかである。よつて右認定の事由に基く買收計画の適否について判断しなければならない。
自作地で当該自作地について自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務の目的に供しているものは、市町村農地委員会が自作農創設上政府において買收することを相当と認めたときは、政府がこれを買收するものであることは、自作農創設特別措置法第三條第五項第二号、同施行令第四條の規定するところである。こゝにいう自作地について自作農以外の者が契約に基いて耕作の業務の目的に供しているとは、自作農以外の者が契約に基いて耕作の労務に從事している場合、すなわちその者が自作農の行う耕作を補助するための單なる使用人でなく、当該自作地の耕作労務を引受けて耕作に從事する一切の場合を包含する趣旨である。その農地についての農業の主体がその所有者であることは自作地という以上当然のことであるから、その耕作について種苗、肥料の買入を所有者がするとか、收穫物を所有者が取得するとかいうことは右規定の適用を妨げるものではない。ところで、原審及び当審における証人眞砂尊雄の証言及び原審被控訴人本人訊問の結果を綜合すると、被控訴人は昭和二十二年三月中訴外眞砂尊雄との間に前記自作地を同人に耕作させその給料として毎月金五百円を支給しその耕作に要する種苗や肥料は被控訴人においてこれを購入し、收穫物はみずからこれを取得しその收支を計算した上利益の十分の六を同人に交付する契約が成立し、眞砂尊雄は右契約に基いて昭和二十二年度及び昭和二十三年度(立入禁止仮処分を受けるまで)右農地について耕作の業務に從事していたものであつて單に被控訴人のみずから行う耕作の補助者として耕作をしていたに過ぎないものではない事実を認めることができる。被控訴人の提出援用にかゝる各証拠によつては右認定を覆えすに足りない。ゆえに右農地は前示規定に該当する自作地に該当するものといわなければならない。そうしてかようの自作地を政府において買收することを相当と認めることは市町村農地委員会の権限に属する事項であることは前示規定に徴して明らかである。
以上判断するところによつて琴似町農地委員会がたてた本件農地買收計画は適法であり、その異議却下の決定に対する訴願を棄却した裁決も從つて違法でないのに、右裁決及び買收計画を取消した原判決は不当である。
よつて、行政事件訴訟特例法第一條、民事訴訟法第三百八十六條、第八十九條、第九十六條を適用し、主文の通り判決する。
(裁判官 浅野英明 藤田和夫 臼居直道)